夏季放牧期間が終了しました その1

2020年11月12日
by ノルドマルク

 

北海道では毎年5月中旬から10月中旬くらいまで市町村公共牧場で夏季放牧がおこなわれます。弊社は本年、「うしみる」の納品以外に北海道東部3か所、北海道北部1か所の牧場で実証実験を行いました。

 

放牧牛関係のビジネスに本格的に関わり2年になりますが、改めてこのマーケットにおいて勉強しなければならないことが多々あると感じています。まず首輪の取付けですが、納品の場合にはそれぞれの畜産農家から牛が預託される入牧時に首輪を取付けます。牛は一頭ずつシュートに入ってもらい、慣れている作業員の方がシュートに誘導するのですが、それも簡単ではありません。シュートに入った後、牛の可動範囲を制限しつつ首輪を取付けるわけですが、それでも抵抗する牛のパワーは強力で、取付作業にもかなりの時間を要します。入牧した牛が広大な牧草地に放たれ、万一首輪の不具合で再回収/再取付けが必要になった場合は、作業員の方々に大変な迷惑をかけることになってしまいます。取付作業をお手伝いしてみて、机上ではわからない多くの課題に気づくことができました。

うしみる首輪のマテリアルにも牧場の方たちからアドバイスをいただき改善をはかってきました。とっさに頭に浮かぶのは耐久性ということですが、作業の方から思わぬことを指摘されました。牛は大変臆病なので、取付時に牛が驚くような音をたてない首輪である必要があるということでした。面ファスナー、ピンバックル、リングバックルなどを試しました。

 

首輪には電池式とソーラー式があり、ソーラー式は来年度リリースではありますが、牛に取り付け装着感の実験(それも容易ではない)を行いました。ソーラーですので端末部が首の下に降りてくるようでは十分な日射が得られません。電池式は仮に牛の首下に端末が来ても、GPS信号受信、LoRa通信に大きな支障がないことを実証実験で確認しました。

 

 

放牧牛トラッキングシステムの難しさは、システム自体がセンサーによるデータの取得、データの送信、データの表示から成り立っている点にあります。牛舎飼いのように牛がかたまって飼育されているようなケースにおいては、通信の問題はあまり発生しないと思います。北海道の牧場においては比較的面積が広く、LoRaゲートウェイをどの辺に何台設置し、各牛との通信を確保するかが大きなポイントとなります。公共牧場専用のネットワークを構築することになりますが、信号調査が欠かせません。通常は人海戦術で行いますが、牛に首輪をつけてしまって、牛に調査させるという手もあります。ただし先述の通り、「一度取付けた首輪は簡単には回収できない」という原則があります。

GPS/GLONASSによる位置情報取得状況についても現地調査がかかせません。天空が開けておらず、木々に覆われているような状況で位置情報が飛んでしまわないか確認する必要があります。「うしみる」を脱柵対策に購入・購入検討される方も多いのですが、位置情報が大きく飛んでしまうと脱柵アラートを間違えて送信してしまう可能性があります。「うしみる」運用前に「ここから出たらアラートを送る」という設定を有効にするために、地図上にジオフェンスを設定します。通常は牧区の柵に沿って少し余裕をもって多角形を描くことになります。位置情報が大きく飛んでしまうような遮閉地があるかなども調査が必要です。

 

>>その2に続く