2024年6月12日
by ノルドマルク
公共牧場への入牧もやっと終盤を迎え、発情検知の実験も準備が整ってきました。弊社では台湾のメーカーと協力して、北海道で3か所、九州で1か所、台湾で3か所の牧場で実験を行っています。
放牧牛端末開発にはいくつかの「越えなければならない壁」があります。まず大前提として端末は夏季放牧期間中電池がもたなければなりません。適正な送信間隔を維持しつつ、電池が6カ月間はもたなければなりません。公共牧場などではそうそう簡単に牛を捕まえて、首輪の付け替えなどできません。弊社の「うしみる首輪1号」は20分毎の送信間隔で約6カ月間電池がもちました。まあ「最低限の基準はクリアできた」というところです。それでも700頭近く放牧している牧場にとって、夏季放牧前の電池交換は大変な人手と時間を要しました。
次なる壁は端末の堅牢性です。弊社が実験をさせていただいている斉藤牧場は、開拓団が割り当てられた石だらけの山に切り開いた牧場です。牛の活動量は他の公共牧場とは比較にならないほど多く、牛は人の背丈ほどある笹の中や、谷の中を突き進んでいきます。端末は石にゴリゴリこすられたり、水飲み場では水没したりもします。そんな環境でも問題なく動作する端末でなければなりません。弊社では様々な環境の牧場で実験を続けることにより、より堅牢な「うしみる首輪2号」をリリースすることとなりました。
3つ目の大きな壁は牛舎から5㎞など遠くにいる牛の発情をどのように検知するかという点でした。「つなぎ飼い牛の発情検知システムはいくつもあるのに、放牧牛の発情検知システムはほとんど見かけない」というのは、「遠くにいる牛からのデータ送信の難しさ」に理由があります。発情検知には体温などによるものもありますが、加速度センサーを使ったものが多いです。LoRa方式では3軸加速度センサーのデータを、1秒間に10回送るというような用途には向きません。「では4Gなど使えばよいのでは?」という質問も承りますが、それでは端末の電池がもちません。とんでもなく大きな電池を内蔵した端末を牛にとりつけることになってしまいます。動態判別には大量にデータが必要となりますが、特殊なデータ圧縮技術を使い送信するという方法もあります。しかし弊社と台湾のメーカーでは「端末にシゴトをさせる」という途を選びました。ただその前にまずはイチから「加速度センサーによる動態判別」の実験をやらなければなりませんでした。
1. 通信機能なしの三軸加速度センサーロガーを放牧牛に取付け、データをログする
2. 同時に牛のビデオを撮り続ける
3. 持ち帰ったビデオを牛の動態(採食、反芻、横臥、歩行)に時間ごとに仕分ける
4. ログしたデータをある式にあてはめ、上記動態と比較を行う
データ取りは1日3-4時間程度何日も行います。「最初の一歩」の実験となりますが、まずまず3軸加速度センサーで牛の動態判別が高精度で行うことができるということが理解できました。